はじめに


株式会社便利屋アルファ遺品整理の現場

本ブログ記事は、2015年7月に投稿した現場レポートの再編集記事です。

私たち株式会社便利屋アルファは、これまでに数多くの遺品整理にたずさわってまいりました。
ひとつとして同じご依頼はありません。
遺品整理をするにあたって、私たちはご事情や状況をふまえて最善を尽くしています。

このブログの投稿後たくさんの反響をいただき、遺品整理やゴミ屋敷解決、孤独死現場の特殊清掃など多数のご相談をいただいてまいりました。

新型コロナウイルスの蔓延により、生活様式や人と人とのつながり方が変わってしまった今。
近くにいる大切な人を守るために、命の尊厳を守るために、私たちが今考えるべきこととは。
皆様の生活に安心・安全・幸せをつくることを目指す会社として、私たちが今伝えたいこと。

そんな思いを言葉にするために、過去のブログを再編集しました。

(ご依頼事例を紹介をするにあたり、個人情報保護のため、元記事と同様、事実に一部修正を加えてご紹介しております)

遺品整理のご依頼

遺品整理


8月中旬、便利屋アルファのもとに1件の遺品整理のご依頼が入りました。
埼玉県さいたま市北区にあるアパートで遺品整理をしてほしいというご依頼です。

ご相談者様のお話によると、この部屋で母親である高齢女性が孤独死をしてしまったとのこと。
そして死後数週間は経過しているとのことでした。

遺品整理や孤独死の現場にたずさわる経験が増えるにつれ、お話を聞くだけで室内の状況におよその察しがつくようになります。


8月という夏の暑さに加えて、室内が閉め切られた状態。
死後数週間経過であれば相当過酷な状況を予想しなければなりません。


しかし、この遺品整理は私たちの予想をはるかに超える過酷さが待っていました。


玄関を開けるとそこにはゴミの山が立ちはだかっていて、その高さは人の背丈を軽く超えていました。

男性の背丈ほどあるから、180センチはあるだろう荷物の山。
それが部屋の奥までずっと続いているように見えるのです。

続いているように見えるというのは、玄関からでは部屋の奥がまったく見えないから。
多分そんな状態なのではと想像をするしかない状態。

どのくらいの日数で作業が終わるのか、この時点では検討もつかない。
そうはいっても部屋の退去などの手続きがあるため、作業完了日は決めておかなければなりません。

私たちは1週間の日程をお客様に了承いただき、遺品整理の作業完了を目指すことになりました。


大量の不用品。1m先に進むことで精一杯

このアパートの間取りは2LDK。

玄関を入ってすぐ左の洋間があり、ここで女性が亡くなっているのが発見されたのです。
共用廊下に面したその部屋の窓ガラスを警察が破って入り、女性のご遺体を発見しました。

それもそのはず。
室内の廊下はゴミで埋まっていて、廊下を通って洋間に入ることはできません。
そしてご遺体の搬出をするにも荷物の山があって不可能です。



《作業 1日目》

遺品整理


8月の中旬。
真夏の暑さ。

玄関を開けて、山に積まれた荷物の前に立つと、そこにいるだけで強い腐敗臭が鼻に入ってきます。

孤独死の現場に立ち入るには、防護服と防臭マスクが必要です。そして長靴も。
手には厚手のゴム手袋をはめて完全防備をする。
それが孤独死の現場の基本的な装備。

でもこの暑さの中で、この装備で作業が出来るのか不安がよぎる。
外気温は35度を超えており、室温はそれ以上の暑さ。

長袖の防護服に身を包み、万全の備えをした私たちの身体は立っているだけで汗だく。
まだ何もしていないのに、ハァハァと息があがるほど。


まずは作業スタッフ全員で玄関前に立ち、お線香を焚いて合掌。

遺品整理作業前のいつもの手順。
故人様の供養と遺品整理をさせていただくことの挨拶をします。


そのお線香を今回はいつもより多めに焚きます。

お葬式でお線香を焚くのにはひとつの意味があって、それはご自宅に安置したご遺体が少しずつ腐敗していく際にどうしても出てしまうにおいを軽減させるためです。


作業前の供養を済ませてから、私たちはスタッフ3名で作業を開始しました。


まずは、玄関前に山となった荷物の分別をはじめる。
朝9時から作業を開始して、8時間作業をした結果、玄関前の荷物の山が1mほど中に引っ込んだだけだった。

スタッフの間に言葉はなかった。

2LDKの遺品整理なら半日程度で完了できる作業もあります。

それが丸一日作業して玄関の荷物が少し減っただけ。
7日間と決めた日程に不安と焦りを感じるばかりの初日が終了。


猛暑の不用品搬出と大量のゴキブリ


《作業 2日目》

遺品整理


翌日も玄関に山積みになった荷物を掘り進める作業。
もうこれは分別をするという作業ではありませんでした。

スタッフの動作は”掘る”という表現がピッタリで、手には大きく丈夫なスコップを持ち、後方に立つスタッフの持つゴミ袋にひたすら不用品を放り入れていく作業。

チラシやプラスチックの食品容器、菓子パンの空き袋。
玄関で山積みになった荷物の大半が普通の可燃ゴミばかり。

こうした作業を進めていくとゴミの隙間からたくさんの虫がわいてくる出てくることも気になってくる。
大量のゴキブリ。

大きさは小さいが数がとても多い。おそらくチャバネゴキブリ。

小指の爪ほどのサイズのゴキブリ達が、荷物を搬出する私たちの隙を縫うようにして天井に逃げ、天井と壁のコーナー部にたまっていった。
天井の四隅にはすでに100匹近くはいるだろうゴキブリが下を見下ろすように溜まっていく。


ザワザワと動くゴキブリ、防護服による暑さ、マスクをしても隙間から入ってくる腐敗臭。

この時の私たちは、体力と集中力はもって30分が限界になっていました。
30分作業して、30分休憩。

そんな作業を繰り返してなんとか2日目を終える。
不用品の搬出は、廊下半分ほどまで進められた。
けれど、まだまだ終わりは見えない。

作業後にスタッフで打ち合わせをして、ゴキブリを駆除しようという話をして、バルサンを焚くことにしました。

作業を終えた後、荷物のなくなった玄関に3個をセットし部屋のドアを閉めてこの日は終わりました。

しかしこのゴキブリ駆除をしたために、翌日とんでもない状況を引き起こすことになってしまったのです。


天井からゴキブリが落ちてくる恐怖


《作業 3日目》

遺品整理


翌日、玄関を開けてゴキブリ駆除の効果を確認する。
玄関の足元には何百匹ものゴキブリが散乱していました。

効果あり!とホッとしたのも束の間、天井を見上げるとそれでもなお、生き延びたのが数十匹は溜まっていました。

それも昨日よりも弱っているせいで、ポトリ、ポトリ。
ゴキブリが天井から降ってくるのです。

私たちは間違いに気付きましたがもう遅い。

ゴキブリはそのまま逃がしておいたほうが良かったのです。
駆除剤で弱って天井に逃げたゴキブリが作業する私たちの頭に降ってくるのです。

スタッフ全員のやる気が落ちているのは明らかでした。

しかしそれでも、作業は進めなければなりません。

弱ったゴキブリをスプレーの駆除剤で仕留めながら作業を進めることにしました。

この時、暑さともろもろのストレスで自分がやっていることがよく分からなくなっていました。
ただひたすら目の前にあるモノを掘っては袋に詰める。
30分作業して、休憩。その繰り返し。
遺品整理ではなくただひたすらに穴を掘っているような感覚。


徐々に休憩する時間が長くなりながらも、3日目にご遺体の見つかった左の洋間までたどりつきました。

作業後の自分たちの身体はゴミの臭い。
防護服を脱いで身体の臭いを嗅ぐと、現場のにおいが染み付いている。
そのにおいのまま帰社しました。


認知症がゴミ屋敷のきっかけになる


《作業 4日目》

遺品整理


4日目にしてようやく、ご遺体が発見された部屋の遺品整理にとりかかる。
まだ作業は半分以上残っている。

玄関から見て左の洋室。
衣類の山。
洋服をしまう部屋だったのだろうか。

積み上げられた洋服の山は、高いところで天井ちかくまで来ていて天井との隙間は50cmほどしかない状態。

山を登ってかがんでいないと天井に頭をぶつけてしまう。
ほとんどが封を開けていない洋服。
靴下やブラウス、タイツなど。
その洋服を袋詰めします。

株式会社便利屋アルファの孤独死遺品整理の現場


徐々に山が下がり、部屋の中央付近の荷物を袋詰めしている時、手に伝わってくる感触が変わりました。
ドロっとした液体を触った感触。
すくいあげると、手の中には血液ついた髪の毛の束。

「現場が見つかりました。袋を2重にしてください」
スタッフもこの言葉をすぐに理解して袋を用意する。

他の荷物よりも丁寧に、手の中にすくい上げた身体の一部を袋に入れる。
この場で改めて合掌。

ご遺体の見つかった場所は荷物も体液で汚れてしまうため、荷物の回収も慎重に丁寧にする必要があります。
体液が飛び散らないようにするためでもありますが、故人様の供養をするということも丁寧に作業をする理由のひとつ。

他の場所よりも時間をかけながら荷物を回収し終えたところで一旦休憩。

ご遺体の見つかった場所の荷物を回収したことによって、スタッフの間にも少しだけ安心感がうまれました。

ご遺体の発見された場所は特に気を遣うもの。
感染症の危険があることも一因ではありますが、故人様のご冥福を祈る気持ちもあります。
その場所を作業できたことでひとつ大きな壁を超えたような気持ちになれたことが今後の作業の進み具合にもよい影響を与えます。

休憩をして気持ちを切り替えて回収作業を進めます。
部屋の中央を中心にして未開封新品の洋服で山ができているこの部屋。
ここで亡くなってしまった方の状況として想像できることは、認知症を患っていたのではないかということ。

認知症が原因で起きる症状の一つに、ものを大量に買い込んでしまう症状があります。
食べきれないほどの食品の山ができている他の部屋を見ても、買い溜めをし続けてしまったのだろうと容易に想像ができました。
この女性の症状に気づき、ケアをすることが出来ていればこの女性の孤独死も防げたのではないかと思うと、遺品整理をしながらもやるせない気持ちが浮かんできてしまう。

”ゴミ屋敷は住む人がだらしないからだ”そういう解釈もまだ根強くあります。
しかし、ゴミ屋敷になってしまう原因は複雑な事情が重なって起きていることはとても多いのです。
たとえば認知症のケアが不十分で、なおかつ家族と疎遠になってしまっている。そうした事情が重なってしまうと状況が一気に悪化していくことはあります。


時が止まったままの部屋


《作業 5日目》

遺品整理


これまでのように、ひたすら荷物をスコップで掘り進め、午後になってようやくリビングへ続く廊下の荷物がほぼ無くなり、キッチンの前に辿り着くことができました。

キッチンは生ゴミの腐敗臭が強くなって、出てくるゴキブリの数も一気に増えてきたので、再度ゴキブリ駆除剤を使うことにしました。

荷物を掻き分けるたびにゴキブリが出てくる。
そのストレスは作業効率を下げる要因。
ゴキブリの対処にかかる時間とストレスを減らして、作業完了日に間に合わせるためにも作業のペースをもう少しあげなていかなければ。

この日はこれで終了。


《作業 6日目》

遺品整理


翌朝、玄関を開けると予想通り、床には大量のゴキブリが動かなくなっている。
普通に見たらびっくりしてしまう状況、でも何日もここで作業をしてきた慣れで大量のゴキブリを見ても動じない。

害虫駆除のおかげでペースもあがり、キッチン周りの回収も順調にすすみリビングへ。

ゴミ屋敷の片付けを数多く経験していて気づく、ゴミ屋敷によく見られる共通点。
それは部屋の奥へ行くほどに汚れた荷物が少なくなって、積み上げられた荷物の量も少なくなっていることです。
家の奥は、”まだマシ”な状況であることがとても多いのです。

奥の部屋は、何年も時には何十年も立ち入ることなく使われず、そのままの状態で残っていたりするのです。
新聞紙の一番上に積まれた日付は平成10年。


リビングにはホコリがかぶさったテレビ、テーブルや椅子。
静かに置かれたままの家具は時が止まったまま、女性の帰りを待っているようにも見えました。

ゴミ屋敷になる前の健康で元気な女性のお人柄が伝わってくるようなこのリビングを、ご遺族にも見せてあげたいと思いつつ残りの遺品整理を続けました。


風が吹き抜ける部屋


《作業 7日目・最終日》

遺品整理


今日で作業を終わらせる。
それを目標にリビングと和室の片付けに取りかかりました。

株式会社便利屋アルファ遺品整理ゴミ屋敷の解決

遺品整理において貴重品の選別は大切な作業のひとつ。

それがゴミ屋敷での遺品整理となれば、貴重品探しはとても難しい。
ゴミや不用品を搬出しながら貴重品を探すのはかなりの集中力が必要になります。

貴重品探しのコツをひとつお伝えするならば、片づけができなくなった方の場合、貴重品を金庫やタンスなどの特別な場所にしまうのではなく、普段から持ち歩いているカバンに入れているケースが多いのです。

だから、貴重品を探す時はまず部屋の状況を落ち着いて眺めてみること。
そして生活をしている様子を想像してみる。
「家に帰ってきて普段づかいのカバンをどこに置いていたんだろうか」
ものの置き方だけでもその人の性格やクセが見えてくることもあります。

今はもういない故人様のことを部屋の状況から想像して貴重品を見つけ出せることもあります。

そうした推理に頼るだけでなく、地味に丁寧に仕分けをすることも当然必要になります。
この現場でも大小あらゆるカバンから現金や通帳、印鑑、写真などの貴重品が出てきました。

そしてとうとう、2LDKのアパートの遺品整理を完了させることができたのです。

最終的に搬出した荷物の量は2トントラック7台になりました。
この量は、一般的な2LDKの遺品整理のなんと7倍もの荷物量です。

玄関を開放して、リビングからベランダに通じる掃きだし窓を開けると部屋に風が吹き抜ける。

荷物の無くなった部屋。
淀んでいた空気が流れていく。

最後に清掃をしてこの案件を完了させることができました。

改めて玄関前でスタッフ全員で合掌、この部屋をあとにしました。


命の尊厳を守るために

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一人の女性の死の現場に間近で向き合い、遺品整理をする。
こうした現場の経験は、私たちに考えるきっかけを与えてくれます。

ゴミ屋敷にならずに生活をするために、私たちに何ができるのだろうか?
孤独死を防ぐために、私たちにできることは?
認知症になっておひとりで暮らす人の不安や不自由を社会でどう支えていけるのだろうか?

どの命も平等に大切で、最期の時までその人が自分を大切に生ききる。
それを支えること。
命の尊厳を守ること。

今を生きる人がもっと意識しながら、自分のすぐ近くで、手の届く範囲でできることしていけば、この世界はもっと安心で安全で幸せな世界になっていくのだろうと思うのです。


株式会社便利屋アルファは、遺品整理やゴミ屋敷解決を通してひとりひとりのお客様を助けてまいります。
そして、このような事例をお伝えすることによって、私たちがより良く生きていくために何ができるのか。
それを考えるきっかけをつくっていきたいと思います。

株式会社便利屋アルファのビジョンは、ひとりひとりの生活に安心安全幸せをつくることで、より良い社会づくりに貢献すること。

それが私たち株式会社便利屋アルファの想いです。



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