ライター/角田真一

今回ご紹介するのは、便利屋アルファにご依頼くださった、ある女性のお話。依頼内容は同市内でのお引越しでしたが、彼女が欲しかったものは愛?それとも…。彼女の引越しに隠された人生の計画とは…!?

再婚で引越しを考える女性

■「賃貸アパートは最悪よ」と彼女は嘆いた

私がその女性のお客様に初めて出会ったのは3年前でした。その女性は30代前半くらいでしょうか。当時、結婚していた男性と離婚が決まり、彼女が家を出ることになったため引越しのご依頼でした。荷物の量が少なく、同じ市内への引越しだったので、2万円程度の予算で引越しをやらせていただきました。

彼女は引越し作業中も、私ともう一人のスタッフによく話しかけてきました。「ほんと、賃貸アパートってダメよ!壁は薄いし、狭いし。最悪よ~!」 「あの旦那に期待しちゃダメだったわね!」 「あーぁ、キレイな高層マンションに住みたいわ~!」 「角田さん、あなた持ち家?うそー!良いわね~結婚してるの?ふーん…してるんだ?へー。」彼女は引越し費用が安く済んだことをとても喜んでくださり、「またお願いしま~す♥」と言ってくれました。

高層マンションへ引越し

■「再婚は私のラストチャンス」と彼女は意気込んだ

それからしばらくはその女性からのご相談はなかったのですが、3年後の今年の1月、久しぶりにその女性から「相談があるので来てください♥」とご連絡をいただきました。早速伺うと、久しぶりにお会いするお客様はとても機嫌の良いご様子です。話を聞くと、新しい男性と再婚することになったといいます。それはおめでとうございます、と私もお祝いを述べ、ご相談内容は新居への引越しのことでした。

よくよく話を聞いていると、引越し先は以前から彼女が望んでいた高層マンション。私は3年前のあの会話を覚えていたので、「ついに念願叶いましたね!」と笑顔で話すと、彼女はニヤッと意味深な笑みを浮かべ「そうなのよ~♥」と言いました。その瞬間、私は背筋がゾッとしました。「これが私のラストチャンスよ♥」彼女のその言葉の意味が、結婚のチャンスのことを言っているのだと私はその時は思いました。

■彼女の頭の中は高層マンションのことでいっぱい!

お客様の荷物量は前回の引越し時とほとんど変わっていませんでした。身軽な引越しです。ですから、一度の打ち合わせで予算と日程が決まり、あとは当日を迎えるだけで十分なはずでした。

ところが彼女は、再度私に連絡をしてきました。「ちょっと相談があるんだけど来れる?」私は「どうしましたか?」と聞きましたが「うん、ちょっとね…」と言って、具体的なことを話してくれません。私は再び、彼女の家をたずねました。

「ごめんね、忙しいのに!」と彼女は私を出迎えるなり、いつものマシンガントークで思いの丈やこれからの計画について、堰を切ったように私に話し始めました。新しい旦那がマンションを購入したこと。彼女はそのマンションを自分のものにしたいがために、その男性と結婚することを決めたこと。そして、新しい旦那が生きているうちにマンションを自分の名義にする方法はないかという相談。彼女はそんな話をしながら気持ちの高ぶりを抑えることが出来ない様子で、その話が終わるころには、彼女の想像の中ではマンションの名義変更がすでに完了していました。私の心は、まだお会いしたこともない結婚相手の男性に対する同情の気持ちでいっぱいになっていました。

■新居で見た彼女の表情を私は忘れられない

引越し当日、私は彼女の結婚相手にどんな顔をしてご挨拶すれば良いのだろうということばかり考えていました。新居に行くと、男性が待っていました。私は「何も知らない…何も聞いていない…」と心で呟きながら、精一杯の明るさで「お世話になります、便利屋アルファです!ご結婚おめでとうございます!」とご挨拶しました。

結婚相手の男性は、悲しいほどにとても優しい人でした。彼女は終始笑顔でした。私は作業後の料金の精算をしながら、彼女に改めてお祝いの言葉を伝えました。彼女は後ろに立っている男性を意識しているのか、「今度は失敗しないように頑張りますっ♥ お世話になりました♥」と可愛げのある言葉で作業のお礼を言ってくださいました。そして玄関のドアが閉まる直前、彼女がこの前見せた、あのニヤッとした意味深な笑みを浮かべたのを私は見逃しませんでした。私はあの男性に名刺を渡しそびれたことを今、とても後悔しています。

 

<今回の作業事例:単身の引越し(同市内)>

作業人員および車両2名と軽トラック
作業時間約2時間
作業料金20,000円+消費税

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