ライター/角田真一

『孤独死』という言葉が社会に浸透していることを感じる昨今。誰かに看取ってもらえることが当たり前ではないと多くの人が感じます。便利屋アルファが実際に請け負った孤独死の事例を紹介する現場レポートです。

遺品整理

■孤独死が発生した現場は戸建て住宅街

雨の日の朝、私はいつものように車で現場に向かっていた。まだ午前8時30分をまわったばかり。今日の1件目は孤独死現場の遺品整理だ。詳細は現場で確認することになっている。朝から孤独死の現場は、プロの私たちでも憂鬱になります。今までにも数多くの現場をやってきているとはいえ、あの独特の腐敗臭や雰囲気には慣れない。いや、慣れてはいけないような気がする。

午前9時、私は現場に到着した。まだ見た目にも新しい埼玉県内の一戸建て住宅。ここは同じような物件が建ち並ぶ住宅街。私は車から降りて、雨の中、依頼者の家のインターホンを押した。すぐに、「はい」と落ち着いた男性の声がインターホン越しに聞こえた。車の止まる音を聞き、インターホンが鳴るのを待っていたかのように応答が早く、私は少し慌てて名を名乗った。

■依頼者は40代の夫婦

玄関から出てきたのは40代の男性。その男性は「よろしくお願いします」と言いながら玄関を大きく開け、私ともう一人のスタッフを自宅に入るよう促した。「2階です」と玄関からすぐにある階段を上がっていく男性。私達も後に続く。

階段に足をかけたところで、女性がリビングのドアを開けて出てきた。その女性も「お世話になります」と、一言私達に挨拶をした。私達も挨拶を返し、階段を上がった。30坪ほどの土地に建っている一戸建て。2階には3部屋、男性は階段を上がった正面の部屋のドアを指さしながら「ここです」と言った。

■孤独死の現場で見たもの

部屋を開けるとすぐに、いつもの「におい」が鼻に入ってきた。私が孤独死の現場に立ち入る時、最初だけはマスクをしないことにしている。なぜなら「におい」の強さを確かめておきたいからだ。そのにおいが好きだからではない。私がこれからの作業を覚悟するためだ。

その腐敗臭は外の湿気と混ざり合い、6畳の洋室全体を不快に包んでいる。遺体の発見は死後1週間経過した頃だという。今日までにそこからさらに1週間経過しているので、現場の状況は2週間経過している。遺体の発見場所はシングルベッドの上。血と体液が染み込んだベッドマットが部屋の中央に置かれ異臭を放っている。息絶えた場所は、いつも無言で生きていた痕跡を訴えてくる。血液などの体液、そしてその体液が縁どる遺体の輪郭。私はそのベッドに向かって合掌し黙とうを捧げた。この後の流れを男性に説明し、私は作業を開始した。

■この自宅内で起きた孤独死の真相

40代の男性がこの部屋のドアを開けた時、息子さんは変わり果てた姿で倒れていたそうです 。絶命してすでに1週間が経過していたのだから、心の動揺は想像を絶する。カッターナイフで切った手首からは血が流れ、ベッドと床に染み渡り、床に流れた血はすでに凝固し乾きはじめていた。ドアを振り返ると内側にはドア枠に沿ってクラフトテープの跡が大量に残っている。ドアを開けるのに苦労したのはこのせいだった。

自ら命を絶った若者は、学生の時に体調を崩し自宅で療養していたという。そのまま、ひきこもり状態になってしまったらしい。両親は子供に干渉をしないほうが良いと考え、食事の用意と精神科への通院時以外はそっとしておいたという。

私は、体液を吸って重くなったベッドマットを特別に用意した大きな袋で包み、室内の階段をゆっくりとおろし搬出した。依頼者であるご両親は現場の説明をした後は、リビングに行ったままこちらへ顔を出さなかった。薄暗い雨の朝にもかかわらず、リビングの明かりを点けず、静かに作業が終わるのを待っている。遺品整理のあと特殊清掃も施し、1時間で作業は完了した。

■この記事を書くことについて

依頼者のプライバシーにかかわることを不必要に探らないことが便利屋のマナーですので、この若者が死を決めた本当の理由を知ることはできません。しかし実際に起きたことを伝え、知っていただくことが、私に出来るせめてもの社会貢献だと思いましたので、この記事を書きました。一人でも多くの大切な命が救われることを切に願い、私もそのような助けが出来る人間になることを改めて心に誓いました。

<今回の作業事例>
孤独死の遺品整理、床の一部を特殊清掃
回収物はベッド一式、衣類など軽車両1台分
作業人員および車両:2名と軽トラック
作業時間:約1時間
作業料金:39,000円+消費税

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