ライター/角田真一
大切な人との別れは大きな喪失感や孤独感を伴い、生きる気力を奪うこともあります。時間がそれを解決してくれるとするならば、想い出という過去の時間もまた、立ち直る勇気を与えてくれるのでしょう。今回ご紹介するのは、想い出探しのご依頼をいただいた遺品整理のエピソードです。
■大切な人との別れと、遺族の心の整理
四十九日、もしくは一周忌が過ぎた頃に遺品整理を始める方が多いのは、大切な故人との別れに際して残された家族が前に進むため、心の整理をする勇気が出るタイミングだからでしょう。それでも、故人の人生の長さだけ積み重なった大切な想い出の数々を、そう簡単に片付けることは出来ません。今回ご紹介する事例は、亡くなったお母様との想い出探しがテーマのお話です。
■想い出の人形を探して
電話でご相談をいただいた女性のご自宅に伺うと、部屋の中は空き巣にでも入られたのかというくらいに荷物が散乱し荒れ放題。先日亡くなったお母様との想い出の人形を探そうと、押入れの荷物を引っ張り出したら収拾がつかなくなったようです。朝からお一人で無我夢中でやっていたものの、我に返って周りを見まわすと、足の踏み場もないくらいに荷物が散乱してしまい、慌ててご相談くださいました。
「人形は見つからないし、荷物も元のように収まらないし。不要なものを処分しながら、人形探しを手伝ってください」というのがお客様のリクエスト。私も「よし、早速やりましょう!」と、そのまますぐに作業を開始しました。時刻はまだ午前10時。今日中に見つけることも出来そうです。
■大量の人形から想い出の一体を探す
今回の作業は戸建て2階にある6畳の和室の片付けと人形探し。部屋いっぱいに散らかった荷物の中から不要になったものを運び出だす作業から始めます。1時間で軽トラック半分ほど、45リットルのゴミ袋にして15袋は出せました。
足の踏み場が確保できたので、押入れの捜索開始です。お客様の覚えている人形のイメージを聞いて押入れの中から人形を出していきます。出てくる出てくる、すごい数の人形たち。その中の一つがお母様との想い出の品だと言います。お母様もお客様も人形が大好きで、集めに集めた人形が押入れにしまわれていました。
■気づくと人形に囲まれた私
お客様に確認してもらうため、一体ずつ丁寧に畳の上に並べていきます。全部並べきるころには私は人形に囲まれていました。200体近い人形に囲まれたお客様と私。お客様にとってはどれも大切な想い出の数々。目を潤ませながら一つずつ懐かしそうに見ていきます。
そして「あーこれよ、これ!」と言いながら、一体の人形を手に取りました。それはお母様が縫ってくれた洋服に身を包んだリカちゃん人形でした。「小学生の時、この人形とお揃いの洋服を母に作ってもらったことがとても嬉しかったのよ」と話すお客様の目からは大粒の涙がこぼれていました。
■母の優しさを思い返し、前に進む力が湧いてくる
無事、大切な人形を見つけることができ、お客様も喜んでくださいました。大切な人との別れは大きな喪失感や孤独感を伴い、気力を奪うこともあります。時間がそれを解決してくれるとするならば、想い出という過去の時間もまた、気力を与えてくれるのでしょう。遺品整理という仕事を通じて、お客様の心に気力を呼び戻すお手伝いが出来たらいいなと思っています。
<今回の作業事例>
遺品整理と大切な人形探し
作業人員および車両:1名と軽トラック
作業時間:約2時間
作業料金:22,000円+消費税
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