本ブログ記事は、2015年7月に投稿した現場レポートの再編集記事です。
ご依頼事例を紹介をするにあたり、個人情報保護のため事実に一部修正を加えてご紹介しております。
アパートで火災が発生。女の子が犠牲に。
埼玉県桶川市にあるアパートの一室で火災が発生。
この火事で一世帯の部屋が全焼。
私たちの会社に、残された家財撤去のご依頼が入りました。
部屋の間取りは2DK。
火災は部屋の一番奥にある6畳間で発生。
火災の原因は灯油ストーブ。
近くにあったカーテンに引火し、室内が全焼してしまったとのこと。
この火事で最も悲しむべきことは、この部屋に住む家族のひとり、中学3年生の女の子が逃げ遅れてしまったことでした。
その日、女の子は風邪をひいて学校を休み自宅で寝ていました。
母子家庭のその家族は、母と女の子、弟の3人家族。
お母さんは仕事へ、弟は小学校へ行っている時間に火災が発生したのです。
女の子は2段ベッドの上段に寝ていて、弟が下の段。
その部屋にストーブがあって、そこが出火の原因。
女の子は火災に気づいて玄関から逃げようとしたのものの、逃げきれずに命を落としてしまったという。
玄関のすぐ手前で倒れているのを消防隊に発見されました。
火災現場の家財処理はどのように行うのか?
私が依頼者から相談を受けて現場に着いた時、一人の女性がその部屋で待っていました。
年齢は60歳くらいでしょうか。
手には軍手をはめて口にはマスクを着け、顔は煤(すす)で汚れて真っ黒でした。
女性は焼け焦げた荷物を仕分けする手を休めることなく、最初に書いた火事の経緯を私たちに説明してくださいました。
私たちへのご依頼は、残された家財の全処分。
木製品は焼け焦げ、冷蔵庫は溶けて原型をとどめていない状態。
火災現場では仕分けすら難しいことも多く、通常の片付けとはまったく違うものです。
焦げたにおいとプラスチックの溶けたにおいが混じって、防臭マスクなしでは作業が苦しい状況。
火災現場の家財処理を説明すると、まず役所に罹災(りさい)証明書を発行してもらいます。
罹災証明書とは火災が起きたことを証明する書類のことです。
この書類を管轄の処理場に提出すると家財を受け入れてもらえます。
(火災時に発生した家財処理費用は、免除されるケースもあります。各自治体にお問い合わせください)
これが火災時における片付けの一般的な方法。
我々のような業者へくる依頼は、全焼などの被害が大きいケースです。
現場にいたご依頼者は、ここに住むご家族の祖母にあたる女性でした。
目に涙を浮かべて私に経緯を説明しながら、焼けた家財を手にしては袋にそれを詰めるという作業を力なく続けていました。
思い出探しを続けた私に
作業当日も軍手とマスク姿で立ち合い、私達の作業と一緒に焼けた荷物を袋に詰める作業を黙々と続ける女性。
私はその様子がいたたまれなくなって、近くにあった女の子のものだと思われる学校で使うノートやファイルの一部を女性に渡して「これなんかまだ焼けてなくて、思い出になるんじゃないですか?」と話しました。
女性は「そうね、ありがとう」とつぶやき、荷物を手にして段ボールに入れた。
私はその姿を見て、片付けるよりも先に火を免れた荷物を探しはじめた。
そして、焼けていない荷物を見つけては女性に手渡すことを繰り返しました。
そんな遺品探しを1時間も続けていた時、女性が私に話しかけました。
「そんなに思い出があったら余計につらい・・・」
私はハッとしました。
私たちへのご依頼はこの部屋を片付けること。
思い出の品を探すことではない。
女性は私達に相談する何日も前から、大切なお孫さんを失った喪失感に押しつぶされそうになりながらここにいたのに。
後から現場に来た私に同情されて思い出の品を手渡されて、いつまでこの場で苦しみ続けなければならないのだろう。
思い出を渡されるたび「命より大切なものはない」ときっと思っていたはず。
家財が片付いてもご遺族の心は
そこから私はできる限り早く片付けを進め、その日のうちにほとんどの片付けを済ませました。
思い出になりそうなものは段ボールにまとめて入れてお渡しし、もし不要であれば後日引き取りに伺いますとお伝えしました。
荷物のなくなった部屋を見て、少しだけホッとしたような表情で感謝の言葉を口にしてはくれたものの、問題の一部が解決しただけ。
私にできることは精一杯のお悔やみをお伝えすることだけでした。
空になった部屋の玄関前でスタッフ一同合掌。
今、ご遺族の悲しみと苦しみが少しでも和らいでいることを願ってやみません。
改めて私たちが伝えたいこと
人命が奪われてしまった火災現場に立ち入った経験で私たちが感じたこと。
それは命より大切なものはないということです。
残された家族の悲しみがどれほど大きなものかを感じていただき、火災を起こさない生活のため、改めて今の生活を見直すきっかけしていただきたいのです。
室内でストーブを使う際には、燃えやすいものを近くに置かないこと。
火をつけたままその場を長時間離れないことなど。
安全対策の徹底をお願いいたします。
ささいなことで火災事故が起こる危険があります。
決して他人事ではありません。
命よりも大切なものはありません。
ご遺族の深い悲しみを目の当たりにして、それ以外の言葉は思いつきません。
当たり前の日常が幸せであることを忘れずに。
安心安全で幸せな生活をぜひ大切にしてください。
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